アートの広場 Vol.09 センダックの「絵本論」

前回、『さよならサンボ』冒頭が言う「……必要以上に細々としていない略画風の挿絵は
モーリス・センダックが進んでお手本にしたと伝えられるのが頷ける。……」
『ちびくろさんぼ』のバナーマンの絵が『かいじゅうたちのいるところ』の
お手本であるかのようだ。という意味の事を書きましたが
モーリス・センダックの絵は、緊密な画面構成で技術的に達者です。
彼はミッキーと同じ年に生まれています。それもあってディズニーファン。
12歳のときに両親と観に行ったディズニー映画『ファンタジア』が
後の絵本制作に大きな影響を与えた、とも言われています。
宮崎駿の友達のジョン・ラセターは、ディズニー在籍時に、CGと手書きアニメを
融合させた実験作として『かいじゅうたちのいるところ』の短編映像を制作しています。
2010年には、スパイク・ジョーンズ監督の実写による長編映画
『かいじゅうたちのいるところ』が公開されてもいます。
なんと幅広く、インスパイアーされた人たちが多いことか
それだけ共感できる作品だということです。
そのセンダックが「進んでお手本にしたと伝えられる」『ちびくろさんぼ』の
挿絵は技術を見習ったのではないのは明らかでしょう。
技術的に上の者が、それ以外の者に学ぶものは、何か?
子供に向き合う「心」を学んだんだろうなぁ、と思いました。
また、センダックは作家としては珍しく『センダックの絵本論』を著しています。
250ページほどのハードカバー。正面切った題名である「絵本論」を書いている作家は珍しい。
「論」というのは、順序立てられた思考・意見・言説をまとめた物であって
平たく言えば「~~について」だろうと思います。必ずしも理論体系の確立や法則なしには
「論」とは呼べない訳ではない……と思っています。
また、作家以外では「絵本論」は多数あります。
いわさきちひろの息子の松本猛も「絵本論」を書いています。
ところが、これらと比べて異質なのは『センダックの絵本論』は
先人の作家の評価一つにしても画家としての視点であり、見方が違う。
つまり技法はもちろん売り込み方から、生き方、心構えのすべてが書かれている感がある。
絵本の祖コールデコットから何を学んだか、ピーターラビットのポター論は
2篇も取り上げている、と見てくると、いかにイギリスの古典から学んだかが伺われ
この脈絡の内にヘレン・バナーマンの絵を最も忠実に再現している初版の絵もあるように思う。
この「絵本論」と『センダックの世界』にある多数の写真をみると、センダックの秘密を
垣間見たようで、実に何故あの絵本が出来たのか分かる気がしてくる。

 

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