アートの広場 Vol.08 『かいじゅうたちのいるところ』

本当は『ちびくろさんぼ』の絵のことが言いたい。
だから『ちびくろさんぼ』の初版とその後の多数の版の事や、いきさつ等を
先に書くと面倒なので、結論的に言いたい事を先に書きます。
有名というより名作といえる『かいじゅうたちのいるところ』をかいた
モーリス・センダックは、この本を出した翌年1964年にコールデコット賞を受賞。
(アメリカでその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に毎年授与している賞)
というより、世界的なベストセラー。
日本のカスタマーレビューでも「子供(1歳半)が1日に何回もこの本を
持ってくるので読んでいるのですが、毎回読み終わった時には、笑顔になってる。」
なんてのもありました。
勝手ですが、彼の作品の中で、この作品の絵が一番いいのではないかと思う。
ちなみに、絵の世界では初期とか後期とかよく評論されるが
そういったタブローと違って「絵が語らなければ」話にならないという
「絵本の世界」では、話と絵が融合して初めて絵本なので、年季で段々よくなる
「匠」、職人工芸の世界とも違うから、こうした事が起こるのだろう。
話は戻ります。エリザベス・ヘイの『さよならサンボ』冒頭の口絵では
「……必要以上に細々としていない略画風の挿絵は、モーリス・センダックが
進んでお手本にしたと伝えられるのが頷ける。生き生きとした描線、
それに輝く色どりも偶然の効果ではない。……」と書かれている。
『ちびくろさんぼ』の絵が『かいじゅうたちのいるところ』のお手本だ
とでも言うようだ。
ここまで書いて、やっぱり順序良く書くべきだったと反省してしまった。
読まれている方の多くが、岩波の『ちびくろさんぼ』のフランク・ドビアス
の絵(を変えたもの)を想定するだろう……が、そうではない!
ドビアスについては、また別に書きたいが、ドビアスの絵自体は悪いものではない。
そうではなくて、作者バナーマンの原画に一番近い「初版の絵の話」なのだが
日本で、この初版のものは、出ていないという事情がある。
この初版の絵については、原画を見るとついデッサンが……と言いたくもなるが
まず、新鮮である。というのは本人の驚きがある。これを初心という。
原画は稚拙と言う評論は多くあって、田島征三さんは
「原書の絵は『稚拙きわまる絵、絵本の絵などといえるしろものではない』とか
『下手でグロテスク』とか書いてあるし、…… 二目と見られたものではあるまいか
と思っていたら、こんなすばらしい絵であったか!とおどろいてしまったのである。
……原書で見るかぎり皮肉なことだが、バンナーマン自身による絵だけがかえって
人種差別的な要素がないような気がする」といっている。

ここで思い出すのは、宮崎駿が『ぐりとぐら』の絵について言っていた
「この絵にも僕は参った。こういう邪念のない絵は、どうしていいかわからない。
……この絵はなんていうか、初心で描いた力がある。……
だからか、百合子さんの絵のようなどこに行くかわからないで描かれた線を見ると
胸を打たれるんです。僕は『いやいやえん』の絵が本当に好きですね。」

つまり、センダックは宮崎と同じことを言いたかったんだろうな
と思ってしまうわけです。

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