アートの広場 Vol.05 『いやいやえん』の絵

 『いやいやえん』と宮崎駿のことを書きましたが、

『いやいやえん』は当時岩波少年文庫の編集者だったいぬいとみこが主宰していた

同人「いたどり」の同人誌に1959年7月に発表され、童話集としては

1962年12月25日に福音館書店創作童話シリーズから刊行されています。

『いやいやえん』発表当時の福音館書店編集長の松居直は

「保育者の言葉で書かれた、日本で初めての童話」と評しています。

 だが、中川利枝子さんといえば『ぐりとぐら』だろう。

 これにについては中川さん本人が書いている。(以下引用)

 「グリム童話に始まって「母の友」のお話から、エッセイ、新聞のコラムなんかまで、

これなら子どもたちにもわかって喜ぶ、というおもしろいのを探して読んだ。

その中で最高に喜んだのが『ちびくろさんぼ』だったのね。

 あの、トラがぐるぐる回ってバタになる話。最後にホットケーキを196枚食べるところで、

みんなは思わずつばを飲み込む。

 そこで私は、ホットケーキの向こうを張って、カステラを作った。園の子たちには、

もっともっと上等でおいしいものをごちそうしようと思って。なんせカステラは、

ホットケーキよりもふんだんに卵を使うんですから。それも大きな卵でなくちゃいけないの。

大きな卵で、子どもたちはびっくりするでしょう。

で、大きな卵が登場するわけだから、その大きさを際だたせるのに、

主人公は小さなのねずみにしたんです。」

   ※「こどものとも年中向き2000年4月号折り込み付録」から

 『いやいやえん』のさし絵は妹の大村百合子さんが描いています。

 高校生のときに「母の友」で初めてのさし絵を描いて『いやいやえん』を手がけ

その後、上智のフランス語専攻の大学生になって結婚して山脇姓になっています。

 この間に初めての絵本として『ぐりとぐら』シリーズの絵を描いています。

『いやいやえん』の絵については、宮崎駿が毎日絵を描いてる「自分たち」

紙にはまだ描いてはいないが、見えている線を描く「自分たち」と違って

子供の後ろ姿にも愛情を感じる絵だ……みたいに言って、自分たちには

描けない絵だ…という意味に取れることを言っています。

 ちょっと意訳しすぎているかもしれないので、引用します。

「この絵にも僕は参った。こういう邪念のない絵は、どうしていいかわからない。

後ろ姿を見ただけで、本当にこの子のことをかわいいと思って描いているとわかる。

僕はとくに物置に入れられた、しげるの絵が大好きです。

   ……

この絵はなんていうか、初心で描いた力がある。僕らは絵をいっぱい描きますから。

描いているうちにどんどん手慣れして、ゴールのわかる線ばかり引いてしまう。

だからか、百合子さんの絵のようなどこに行くかわからないで描かれた線を見ると

胸を打たれるんです。僕は『いやいやえん』の絵が本当に好きですね。」

 中川さんの絵本には、旦那の中川宗弥さんが描いた『ももいろのきりん』あたり

からの絵もありますが、中川宗弥さんは石井桃子さんの『ノンちゃん雲に乗る 』

を含めてたくさん描いていますが、私の目からは芸大だなーーという巧みさがあります。

いい意味で巧いなと思います。

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