アートの広場 Vol.04 ………… 「となりのトトロ」
「ぐりとぐら」の中川李枝子さんの「子どもはみんな問題児」 に
宮崎駿の帯が付いている話を前回しましたが、「となりのトトロ」
オープニングテーマ「あるこう、あるこう、わたしはげんき〜」
でおなじみの『さんぽ』の作詞も中川さんです。
徳間書店の「となりのトトロ」、ポエム版と言われている
詩・中川利枝子 絵・宮崎駿 の本の中に収められています。
この本のあとがきで宮崎さんは「私は学生の頃、児童文学作品
(なんて固い言葉だろう)を書きたいなんて考えていました。
そして、たまたま中川さんの「いやいやえん」に出会いました。
驚天動地というのは大げさかもしれませんが、目からウロコが
五、六枚おちる気分で、それ以来、児童文学作品を書こうなんて
考えなくなりました。…… 」と書いています。
宮崎監督は「いやいやえん」に衝撃を受けて、中川さんに映画化を打診。
断られて、その後に企画が発展して『崖の上のポニョ』になった……
なんて話もあります。
他にも宮崎さんは、中川さんの「そらいろのたね」や「くじらとり」
「たからさがし」なんかを映像化したりしてます。
宮崎さんが「児童文学」好きな理由は逆説的です。本は面白いから
じゃなくて、修行のように読まなきゃいけない、という強迫観念
のもので、しかも大人の小説には、自分ではどうしようもない事が
世の中にはある、というのが嫌で読まなくなったと言っています。
でも児童文学だけは好きだった。気質に合っていたそうです。
曰く、「どうにもならない、これが人間という存在だ」という、
人間の存在に対する厳格で批判的な文学とはちがって、
「生まれてきてよかったんだ」というものなんです。
生きててよかったんだ、生きていいんだ、というふうなことを、
子どもたちにエールとして送ろうというのが、児童文学が生まれた
基本的なきっかけだと思います。
と言っている。